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2015/08/12
「ぼくの好きな先輩」 最終回
執筆者: kureharo (4:08 pm)
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京都の街に、粉雪が舞い散る 寒い冬の夜でした。 僕と先輩は いつものように居酒屋で安酒をあおり、愚にもつかぬ人生論や、芸術論などを語りあっていました。 ・・・で、いつもなら金もないので、そのまま上賀茂の下宿(二人の下宿は近所同士でありました。)まで歩いて帰ったりしていたものですが、その日に限って 「おい、福田君もう一軒行こう!もう一軒。」 おや、珍しいなと思って 彼の様子を見ると、どうやらひどく酔っているようだ。 「上村さん〜今日のところは、雪も降ってきたし、タクシー代は僕が持つから、帰りましょうよう。」 「な、なにい!付き合えんちゅうんか!?」 目が座っているではないか・・・ 「ま、まずい。」内心面倒なことになったと思いつつ、引っ張られるままに〜安いだけの洋酒喫茶(今はなくなりましたが、昔は結構あったんですよ。大きなホールにいくつもの円形のカウンター席が並んだ巨大なスナック店ですね)に付いて行きました。 ・・・案の条 彼がぼくに話したかったのは、例の彼女とのことでした。 大学の卒業を 来年に控えた先輩は、思い切って彼女に告白したらしい。 事の経緯は〜詳しくはわからないが、どうやら 無情にも振られたようである。。 京都の町で長きにわたって温めてきた「男の純情」は、一度も日を見ることなく あえなく終焉を迎えたのでありました。 深酒をしたとは言いながら、人前のこととて 涙を懸命にこらえる先輩の姿は、可愛そうでなりませんでした。 帰りのタクシーの車中〜聞いたところによると、彼女はお家の事情により、日を置かず田舎へ帰って行くとのことでした。 「ああ、無情!もう少し早く、決断し告白していたら・・・あるいは。」とは、身びいきな推論に過ぎないのは わかりきっている。 声を押し殺した、先輩の嗚咽が、いまだに僕の耳に残って離れない・・・ 先日の先輩からの電話で、いまだ彼は独身である旨お聞きしたが、この失恋話が関係しているのかどうか、僕にはわかるはずもない。 おわり |
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